前回は、ナコンパノムの宿に荷物を預け、メコン川へ向かったところまで書いた。
部屋にはまだ入れない。
けれど、荷物がないだけで身体はかなり軽くなる。
まずは朝ごはんを食べることにした。
ナコンパノムは、タイでありながらラオスをすぐ近くに感じる町だ。
メコン川の向こう側はラオス。
さらにこの町には、ベトナム系の人々の文化も残っている。
タイ、ラオス、ベトナム。
国境の町らしく、食文化もきれいに一つには分かれていない。
この旅では、タイ料理だけではなく、そういう混ざり合った土地の食も見てみたかった。
そんなこともあり、朝は街中にあるベトナム料理店へ向かった。

店に入り、メニューを見る。
日本のベトナム料理店ではあまり見かけない料理も並んでいる。
あれもこれも気になる。
以前の自分だったら、ここで3品くらい頼んでいたと思う。
量が多くても、勉強だからと理由をつけて、いろいろ味を見ようとしていた。
でも、今回はそういう旅ではなかった。
無理に詰め込むより、その時の腹具合に合わせて食べるくらいでいい。
メニューは見たものの、細かく選ぶというより、店の人に聞いた。
「カオピヤックありますか?」
あるとのことだったので、そのまま注文した。
カオピヤックセン。
タイで普段よく食べるクイッティアオの米麺とは、少し違う。
米粉にタピオカ粉を合わせた麺で、食感はかなりもちもちしている。
スープ仕立てで食べることが多く、店によってはスープに少しとろみがある。
このとろみが、またいい。
麺についた打ち粉がそのままスープに入ることで、自然にとろみが出るのだと思う。
強い味ではないのに、口当たりに少し粘りが出る。
朝に食べると、妙に身体に入ってくる。
この感じは、日本人も好きな人が多いと思う。
バンコクや他のエリアでもたまに見かけることはある。
ただ、やはりタイ東北部やラオス方面で食べると、より土地に合っている感じがする。
タイでは、クイジャップユアン、またはクイチャップユアンと呼ばれることもある。
タイ料理が好きな人なら、「クイジャップ」という名前にピンとくるかもしれない。
ただ、バンコクなどで見かける、くるっと丸まった米麺のクイジャップとは別物だと思った方がいい。
そして「ユアン」は、ベトナムを指す言葉。
少しややこしい。
でも、このややこしさこそが、メコン川周辺の食文化のおもしろさでもある。
ラオス、ベトナム、タイ東北部の料理は、国境できれいに分かれているわけではない。
たとえば、ベトナムのサンドイッチとして知られるバインミーに近いものは、ラオスではカオチーとして食べられている。
そう考えると、ナコンパノムで最初に食べるものとして、カオピヤックセンはかなり自然な選択だった。
出てきた一杯は、思っていたよりもスープにとろみはなかった。
おそらく、麺に打ち粉があまり残っていないタイプだったのだと思う。
それでも、もちっとした麺とやさしいスープは朝にちょうどいい。
派手さはない。
でも、こういう一杯がいい。
ナコンパノムに着いて最初の食事としては、とても満足できるものだった。

朝にちょうどいい、ナコンパノムのカオピヤックセン。
水も含めて70バーツほど。
日本円で350円くらいだったと思う。

(味変用の唐辛子酢)
円安とはいえ、やっぱり安い。
もちろん、ただ安いだけではない。
その土地の朝に、その土地らしいものを食べられる。
それだけで、旅は少し深くなる。
食後は、もう少し街を歩こうと思った。
けれど、日差しがかなり強い。
このまま歩き続けたら、黒焦げになる。
一度宿へ戻り、自転車を借りることにした。
歩きでは少し遠い場所も、自転車があれば一気に行動範囲が広がる。
せっかくナコンパノムまで来たのだから、メコン川をたっぷり目に焼き付けておきたかった。
今度は、メコン川沿いをもう少し先まで走ってみることにした。


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