メコン川沿いで昼ごはんを食べたあとは、宿へ戻った。
ちょうどチェックインできる時間になっていた。
フロントで手続きを済ませ、部屋へ入る。
部屋はポップな雰囲気で、清潔感もある。
一人で泊まるには十分な広さだった。
窓を開けると、明るい日差しが入ってくる。
川が見える部屋ではないけれど、これはこれで悪くない。
荷物を置き、少し休む。
この日の夜は、あらかじめ予定を入れていた。
メコン川のディナークルーズだ。
バンコクのチャオプラヤ川では、ディナークルーズは人気のアクティビティとしてよく知られている。
ただ、自分は普段の旅で、こういう船には乗らない。
どちらかといえば、町の食堂や市場、人気のローカル店を探して歩く方が性に合っている。
けれど、今回はそういう旅だけにしたくなかった。
せっかくメコン川沿いの町に来たのだから、川の上からナコンパノムを見てみたい。
そう思い、日本にいる時から予約を入れておいた。
利用する日はタイの連休。
どうせ乗るなら、一番見晴らしのいい船上の席がいい。
予約はFacebookからできた。
あとで履歴を見返すと、約1か月前に予約していた。
かなり張り切っていたのだと思う。
席料は200バーツ。
現在の感覚だと、だいたい1,000円くらい。
このくらいなら試してみてもいいと思えた。
出航は18時。
乗船は17時30分からだったので、少し早めに向かうことにした。
到着すると、すでに待っている人がそれなりにいた。
欧米の旅行者や日本人は、ほとんど見かけない。
地元の人やタイ人旅行者が楽しむ場所なのだろう。
船に入ると、案内された席には予約名の札が置かれていた。
自分の名前は佐藤なのだが、札には加藤と書かれていた。
まあ、これも旅先ではよくある。
席に着き、まずはシンハービールを注文する。
もちろん氷入り。
船の上からは、これから日が落ちていくメコン川と、対岸のラオスが見える。
この景色を前に飲むシンハーは、やっぱりうまい。

メコン川を眺めながら、まずはシンハー。
メニューは思っていたより豊富だった。
ただ、酒に合う料理を選んでいくと、自然と候補は絞られていく。
まず選んだのは、メコン大ナマズのフライ。
スパイシーマンゴーソースが添えられていた。
カリッと揚がった魚に、甘酸っぱくて辛いマンゴーソースをつけて食べる。
これはビールが進む。
メニュー名としてはメコン大ナマズだが、この手の魚料理はタイの他の地域でも見かける。
魚の種類は違っても、揚げた魚に甘酸っぱ辛いソースを合わせる料理は、酒のつまみとしてかなり強い。

メコン大ナマズのフライ。スパイシーマンゴーソース付き。
二品目も、メコン大ナマズを使ったトムヤムスープにした。
酒のつまみとして選んだというより、せっかくならナマズ料理をもう一品食べてみたかった。
よくある赤いトムヤムスープではなく、透明なクリアタイプ。
自分は、このタイプのトムヤムもかなり好きだ。
赤いトムヤムよりも軽く、最後まで飽きずに飲める。
辛さと酸味がありながら、魚のだしも感じられる。
船の上で食べるには、ちょうどいい一品だった。

クリアタイプのトムヤムスープ。メコン大ナマズ入り。
三品目は、酒のつまみとして外せない空芯菜炒め。
一皿100バーツ。
街中の食堂と比べると、少し高い。
それでも日本で食べることを考えれば、十分に安く感じる。
濃いめの味付けとシャキッとした食感。
これがあるだけで、テーブルがかなり落ち着く。
ビールのつまみにちょうどいい空芯菜炒め。
船はゆっくりと進んでいく。
だんだん日が沈み、川の上の空気が少しずつ変わっていった。
周りを見ると、カップルや家族連れが多い。
おそらくここは、地元の人にとっても少し特別な日に使う場所なのだと思う。
昼間に自転車で見た教会も、川の上から見えた。

陸から見た景色とは、また少し違う。
対岸のラオス側は、木々が多く、ところどころに飲食店のような明かりが見える。
この日は満月だった。
暗くなっていく川の上で、満月の明るさが料理やテーブルを照らしている。
料理を三品頼んだはずなのに、景色までつまみになって、四品目、五品目が増えていくような感覚だった。

夕暮れのメコン川。対岸はラオス。
最初は、シンハーを三本くらい飲めるかと思っていた。
けれど、料理の量が思ったより多い。
結果的には二本で十分だった。
船はゆっくりと出発地点へ戻っていく。
18時に始まり、20時ごろに到着。
その後も船内には22時までいていいとのことだったが、自分はこの二時間で十分満足していた。
会計は現金のみ。
金額はたしか、全部で7,500円くらいだったと思う。
二年前のタイと比べても、円安の影響を改めて感じた。
それでも、この時間はかなり良かった。
普段なら、こういう観光らしい体験は少し避けていたかもしれない。
でも、ナコンパノムの夜に、メコン川の上でシンハーを飲み、料理を食べ、対岸のラオスと満月を眺める。
これは日本ではなかなか味わえない。
静かで、贅沢な二時間だった。
ナコンパノム初日の夜に、このディナークルーズを入れておいてよかったと思う。


コメント